関東では例年10月から年末ごろまで、「新そば」の文字を店頭に掲げる蕎麦屋が珍しくない。
ガイドブックに載るような高級店はもとより、町の良心的な価格のお蕎麦屋さんでさえポスターを貼り出し、アピールに余念がない。
「新そば」の文字に触れるにつけ胸が躍るのが関東人なのかもしれない。それほど蕎麦は関東人にとって特別な存在なのだろうと推察する。
一方関西はというと、そもそも蕎麦屋というものの絶対数が少ない。
昭和のころに比べれば増えたものの、うどん文化が根付いている関西では「うどん屋」に比べ、蕎麦屋を見かける機会は数得るほどしかない。
数少ない蕎麦を看板に掲げる店であっても「新そば」の文字はどこにも見当たらない。
関東人にとっての蕎麦ほど特別感がないのであろう。限られた時期にしか手に入らない商品は、地域に限らず支持を得るものだが、食文化には謎が多いものである。
ちなみに日本とは季節が真逆の南半球で栽培される蕎麦は夏に新そばのシーズンを迎える。
関東では夏場にオーストラリア産蕎麦を使うお店も存在するらしい。もちろん「新そば」とは謳わず。
時期にはこだわっても産地にはこだわらないあたりが、やはり食文化の謎でもある。
結局おいしければいいんだろうね。